心の手帳 48号(2015年10月)

おわり と はじまり

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 夏のジリジリと肌を焼くような暑さは去り、日が沈むのも早くなってきました。つい先日までは、花火があるから、お祭りがあるからと夜までじれったかったのが、気づけば今では「もう真っ暗だね」と言葉を交わすほどです。
 秋の訪れは楽しかった夏の終わりだからか、少しばかり寂しい感じがします。何事も「おわり」は寂しいものです。しかしながら「おわり」は同時に新たな「はじまり」でもあります。夏が終わり、秋が始まる。2015年の終わりに向けて、どこか寂しげでありながらも、その向こうにある2016年への期待を匂わすこの肌寒さもまた、秋の醍醐味かなと思ってみると、いつもの風景が少し違って見える気がします。もしかしたら足元の落ち葉の裏にも、新しいなにかの「はじまり」が、私たちに見つけられるのを待っているかもしれません。

雑談の難しさ

佐野 友泰〔心理臨床センター研究員?臨床心理学科教員(臨床心理士)〕
 近頃、若い学生さんの中で「年上の人と話が続かない」という話をよく耳にします。就職した後に年長の人と気軽に話せないのは、仕事を続けていくのに困るだろうと思い、授業の中で雑談の練習などやっていました。
 こんな私ですが、不惑の年を越え一念発起して英会話などはじめてみました。毎日一時間ぐらいインターネットを通じて英語圏の先生と会話をします。この中で自由会話になり、「何を話しますか?」と言われると、こちらも英語が堪能ではなく、困ることがあることに気づきました。普段学生さんに雑談の重要性など話しているのに恥ずかしいことです。
 私も四苦八苦しながら英語で何とか会話が続くように心がけています。その中で勉強しながらいくつかコツのようなものを認識しました。
 まず大事なのは、相手がどんな人でも、コミュニケーションを取ることをあきらめないということです。自分が嫌われていなければ、一生懸命話しかけていると無碍には扱われないことにまず気づきました。
 次に、自分の話をしながら、時折相手に「今話した○○はどう思う?」と問いかけること、また相手から聞かれた質問には単語で答えず、自分の意見を示しつつまた相手に質問する、という手順を踏むと、沈黙に陥る時間がだいぶ減少しました。
最後に大切だと思うことは表情です。自分が話すとき、相手が話しているとき、楽しげに話したり聞いたりすると、その場の雰囲気がかなり良くなります。
 若い学生さんのみならず、いろいろな所で他人とコミュニケーションを取れないという人は多いと感じています。会話や雑談をはじめとするコミュニケーションは、少しのコツと話し続けようとする意志、そして経験だと思います。もし会話や雑談に不安を感じている方がいましたら、あきらめる前にほんの少しだけねばってコミュニケーションを続けてみてはいかがでしょう。

実習生(大学院生)のつぶやき

挿絵
 身近にあると、かえって見えなくなることは多いものです。私の場合は、長く慣れ親しんだ地元を離れ、新たな環境に入ったことで、このことを切に感じるようになりました。当たり前にそこにあると思っていたものは、実は当たり前などではないということ。しかし、それに気づくことは、普通に過ごしている中では難しいとも思います。先日地元に戻った際には、多くの友達から「いつ会えるの?」と連絡を貰い、家族からは「ちゃんとやれているの?」と心配され、元気なことを安心されと、自分の周りの人の優しさに改めて触れることとなりました。
 今の環境の中でも周りの方々はとても親切で、温かい方ばかりです。その御恩に報いることができるよう、日々を大切に過ごして参りたいと思っています。
(K.I.)
 
 
イラスト:ふわふわ。り