心の手帳 57号(2018年8月)

秋の楽しみ

タイトル画像
 夏が終わり一雨降るごとに寒さが一歩ずつ近づいてくる季節となりました。校内の木々も色づき始め、毎日違った景色を私たちに見せてくれます。みなさんも外の景色をふと見ると昨日と違った景色に気づくのではないでしょうか。
 色鮮やかな葉っぱはその鮮やかさが終わると落ち葉となって今度は私たちを音で楽しませてくれます。カサっとした音が心地よく、落ち葉の上を歩くのはとても楽しいものです。道を歩いていると小さな子供が落ち葉の上を何度も踏んでいる音、掃除の為に落ち葉を集めている音、いろいろな落ち葉の音が聞こえてきます。秋の木々は私たちに色々な楽しみ方を教えてくれているのかもしれません。

心のすみっこの景色

井手 正吾 〔心理臨床センター研究員?本学教授(臨床心理士)〕
 今は昔、ある村での架空話(おはなし)です。20年以上も長い間入院を続けている50ぐらいの男がいました。
 
  家族も村から離れてしまい誰も見舞いにきませんし、一緒に入院している人とあまり話すこともありません。いろいろ考えすぎて、わけわからなくなりお医者さんや看護師さんを困らせる時や、わけなく何もできなくなり寝込んでしまう時もありました。でも彼は、さみしそうな顔もみせず、また文句や不満も言いませんでした。
 
  ある時、週に1回1時間程小さな部屋でお医者さんでない先生に会うことになりました。彼は言葉少ないながら、思っていることや考えていることを話しました。その部屋には、砂の入った大きな箱と、動物や建物や怪獣などのいろいろな玩具(おもちゃ)がおいてある棚がありました。「その玩具を箱の中において何か作ってみないかい?」と言われたので、彼は時間をかけてやってみました。何となく、牛や羊、草をおいて砂をほったり盛り上げたりして『田舎の風景』をつくりました。ちょっとさみしい感じの景色でしたが、何となく嬉しいような、ほっとしたような様子でした。
  
    それから毎週彼は、小川や花畑、森、山に、犬や馬などいろんな動物といった、少し違うけど似たような『田舎の風景』をつくりました。「何となく楽しそうだね」と言われ、彼は恥ずかしそうに、にっこりしました。

 そんな中、今は街に住んでた親が、なぜかしら、彼を引き取ることとなりました。最後まで箱の中に『田舎の風景』をつくり続けた彼は、何もなかったかのように退院し、二度とその病院に戻ってきませんでした。
* * *

 誰にも、小さい頃にいろいろな思いをして過ごした何気ないような景色が心のすみっこにあるのではないでしょうか。それが時に何となく浮かんでくることは、悪いことではないのではないのかな、と思ったりするところです。
(*「架空話?おはなし」は心の手帳15号2004年の改訂版である)

実習生(大学院生)のつぶやき

挿絵
 この間、目が覚めると既に昼過ぎだったので、そのままテレビでお昼のバラエティ番組を見ていました。ファッションチェックをするコーナーにて、可愛らしい服装をした女性にコメンテーターが4段階評価のうち最低評価を下しているのを見て、ファッションというものが分からなくなりました。
 そんな服装に疎い私ですが、大学院生となり様々な場所に実習へ伺うようになってから服装について考えることが増えました。実習だからといって、常にスーツを着ていれば良いわけではなく、子どもと関わるところではスーツよりも動きやすい服装というように時?場所?場合に合わせた服装を求められます。私にはとても難しいことに感じるのですが、相談された方のお話を伺う立場として、適切な服装ができるようになりたいものです。
(H.Y)
イラスト:ふわふわ。り